15代酒井田柿右衛門氏の襲名祝賀会(5月29日)

 

 

 

 

 

 

昨夜28日、ホテル日航福岡で行われた『十五代酒井田柿右衛門氏の襲名をお祝いする福岡の会』に行ってきました。先代の柿右衛門先生とは1992年に『十四代酒井田柿右衛門』の本を作られた時に、料理と食卓のページをコーディネイトさせていただくというご縁がありました。その折に十四代の柿右衛門先生にいろいろなことを教わり、「柿右衛門様式」の深さと存在意味を考える入り口に立ったように思います。以来、私のお菓子教室で参加者を募り、有田の工房へ出向いて柿右衛門先生のお話を伺ったりもいたしました。

先代は気取らないご様子に飄々とした語り口でいらっしゃいましたが、その内容は深く、伝統を体現した方でありながら、どこかご自分を客観的にとらえておられる評論家の視点をお持ちになり、アバンギャルドな匂いを感じさせる方でした。今の世の中は「きれい」なものは多いが「うつくしいもの」は少ない、とよくおっしゃっていたものです。昨年6月に亡くなられたことは、ほんとうにさみしいことですが、昨夜は十五代がそれらのものを受け継いで、伝統をふまえつつ創作を続ける決意を語られました。400人近い人々が十五代を祝うために集まっていました。

たくさんのご祝辞が寄せられ、中島宏氏は「夢のある作品を創ってくれ」と語られました。私が印象に残ったのは、東京から駆けつけられた林晴三氏の「370年余続いた柿右衛門様式美を絶やすことなく守り抜いてくれ」という言葉です。様式の美を守ることは一見、なぞることのように思えます。けれどもそれでは美は残らない…伝統を受け継ぐことの厳しさが胸に迫りました。

昨夜はどんぐりの赤絵のぐい飲みと十五代の特集記事が掲載された西日本新聞が配られました。(三浦裕子)