忘れられない2012年の2月(2月27日)

 Sweets&Tableの2月クラスは2012年度の新学期です。18日土曜のスタートの日、福岡は雪が積もりました。

 実は9日の朝、私の母が永眠いたしました。生前から自分のことよりも私たちのことを優先し支えてくれた母でしたが、旅立つ日まで、建築士である弟の仕事やこの教室Sweets&Table、甥の受験などに支障のない日を選んだかのようにして旅立ちました。大学院の後期最後の授業が終わった翌日入院し、わずか6日間。もっと世話をしなければならなかった、いやしたかったのですが…。母は私たちが子どもの頃、文化鍋で工夫をしていろんなお菓子を作ってくれました。それが私のお菓子の原点です。「教室はしなさい」と言ったであろう母の意向を感じ、いつもどおりに18日から25日まで2月のクラスをしました。


 2年目のクラスのメニューは「ミルフィーユ」「キッシュ」「サクリスタン」です。ミルフィーユはパイのふくらみをおさえて、芯まできつね色になるまで焼きます。バタークリーム入りのしっかりとしたカスタードクリームをサンドします。もちろんパイには粉砂糖をふりかけて、表面をキャラメリゼさせます。
 キッシュは本来はタルト型より深い型で焼くものなのですが、私はタルト型で焼いています。キッシュの楽しみは中身の味のバリエーションにもあるのではないでしょうか。毎年玉ねぎとベーコンのオーソドックスなものと、サーモンと椎茸の2種類を作っています。他にも帆立とブロッコリーもおいしいですし、『ラ・ヴィエイユ・フランス』の木村シェフの海老と空豆のおいしさも忘れられません。サクリスタンは棒状の生地を捻って焼くクッキーですが、ここではパイ生地の余りで作りました。シナモンシュガーをまぶしています。おいしいですよ。

 3年目のクラスでは「カカオのヨーヨー」と名付けたお菓子「マンディアン風ブラウニー」「コーヒー風味のオートミールクッキー」を作りました。カカオのヨーヨーはカカオ風味のダックワーズ生地にミルクチョコレートのガナッシュ、プルーンなどをはさんでおもちゃのヨーヨー型に仕上げたもの。今年は直径3,5センチくらいの小型に作ってみました。この方が食べやすいようです。
 マンディアンは円盤型のチョコレートにドライフルーツやナッツをのせたものですが、ブラウニーにガナッシュを絞ってドライフルーツやナッツをのせてこんなお菓子を作ってみました。大人好みのお菓子です。オートミール入りのクッキーにラム酒とコーヒーで風味をつけたクッキーも大人好みの味わいです。


 4年目以上のクラスでは、「フロマージュとショコラ」として、クリームチーズとチョコレートでムースを作りました。毎年1月2月はチョコレートのお菓子を作っているのですが、今年の新作がこれです。とろけるような舌触り、チーズとチョコレートの相性の良さ。やみつきになる味だと思います。仕上げはシャンティクリームを絞って、チョコレートで作ったオブジェを飾ります。大きさもデコレーションもみんなでアイデアをだしあったら、クラスごとにいろんなタイプができました。

 焼き菓子は「きんかんのタルト」です。大粒で甘い大分のきんかんたまたまで作ったママレードをいれたタルトです。おいしさの決め手は、パート・ブリゼをしっかりとから焼きすること。さくさく生地にしっとりとしたアーモンドクリーム、そしてきんかんのママレード3つの味が響き合う今ならではの焼き菓子。お煎茶やほうじ茶にもあうと思います。

 ながいクラスの焼き菓子は「新・スプリングロール」。普通の卵生地と抹茶入りの生地を焼き、生地を三分の一入れ替えて、苺のロールケーキを作りました。中心ふきんが若草色のロールケーキと外側が若草色のロールケーキが一度に2つできます。ひとつはつぶした苺をいれた薄桃色のシャンティクリームで飾り、もうひとつはシャンティクリームにスライスした苺をいれて巻きました。クッキーはナッツやドライフルーツをいれたシリアル、ミューズリーをいれたクッキー。バターを多めにいれて、やわらかめに仕上げました。

 今月はどのクラスも、気落ちしている私を見守り、なぐさめようとしてくださる皆さまのあたたかいお気持ちに満ちており、有り難くまた心強く思いました。心よりお礼を申し上げます。ありがとう存じました。親をおくるのは人生の大きな務め。さみしいですが、しっかりと受けとめて生きていこうとと思います。(三浦裕子)