伝統菓子と季節のお菓子・5月クラス(5月23日)
5月は14日から21日まで教室をしました。テーブルはグリーンのダマスク織りのクロスにノリタケのアイビー柄のティーセット。手刺繍のぶどう紋が入ったベトナム製のティーナプキン、カトラリーは椰子の紋様入りで白蝶貝ハンドルのティーナイフ&フォークです。
メニューは5年未満のAクラスは「甘夏のシャルロット」「バウムクーヘン」「ブルーチーズとくるみのクッキー」中級以上のBとCクラスは「マラコフトルテ」「ヴィンドボイテル2種」です。
シャルロットはビスキュ・ア・ラ・キュイエールの生地にムースやババロアを詰めたお菓子。昔からあったものをA・カレームが手を入れて19 世紀の初頭にフランスで流行らせたといわれています。1980年代にパリで、軽いヌーベルガトーとして再流行(?)しました。今月は季節の果物、甘夏で作りました。中に詰めたババロアも果汁をたっぷりと入れていますし、表面には蜂蜜いりの果汁で固めた果肉を飾りました。ババロアにも果肉をいれているのですが、断面は各クラスとも写真を撮り忘れてしまいました。(またしても…)19世紀に流行った貴婦人の帽子に見立てて、リボンを巻いたりもします。
このバウムクーヘンはマジパン入りです。心棒につけて回しながら焼くには専用のオーブンが必要ですが、少しずつ焼き足していく方法を取れば、家庭でもバウムクーヘンのおいしさを充分に楽しむことができます。20世紀初頭のドイツでも、こうして家庭で楽しむ方法を紹介している本があります。ほんのりとスパイスを効かせています。
今月のクッキーは、ブルーチーズ入れた生地に香ばしくから焼きしたくるみをたっぷりと入れた塩味のものです。お酒のおつまみにもぴったり。思わず手が伸びるおいしさです。
マラコフトルテは代表的なウィーン菓子のひとつ。共立て生地ヴィナーマッセを敷いたうえにヴァニレクレームを詰め、ビスコッテンマッセをあしらったトルテです。ビスコッテンマッセはフランス菓子でいうところのビスキュイ・ア・ラ・キュイエールなのですが、使う粉が違うため、生地の食感が違います。ビスコッテンマッセは、たっぷりとシロップをうってヴァニレクレームの中にも入れます。チョコレートをコーティングしたビスコッテンマッセを飾るのが、マラコフトルテのデコレーションです。
ヴィントボイテルとはドイツ語で風の袋という意味。ドイツ語圏ではシュークリームのことをこう呼びます。星口金で絞り出して焼くことと(ホイルカップにのせているので分かり難いのですが)底にチョコレートをコーティングするのが、ドイツ風の仕上げ方です。ここでは、キルシュで風味をつけたカスタードにはダークチェリーを入れ、ラムで風味をつけたチョコレートカスタードにはバナナを入れてみました。ザーネクレーム(生クリーム)をたっぷりと絞って、生地をのせています。どれがチェリーかバナナかおわかりになるでしょうか。
今月はティータイムの前に、グリンピースのポタージュをご用意しました。カリカリに焼いた細切りベーコンをのせたのですが、沈んでしまいました(笑)また今月のお菓子の話は「マラコフ」と名のつくお菓子についてお話しました。マラコフはクリミア戦争時にあった要塞の名で、19世紀後半は、マラコフと名付けられたお菓子がたくさん作られます。
今月は熊本からのお生徒さんも、教室にいらっしゃることができました。こうしてお菓子を楽しむことができる幸せを、あらためてかみしめたことでした。(三浦裕子)